C 0508-5: 1999
3b 許容リスクの概念と安全度水準の決定
3b-1 ALARP (As Low As Reasonably Practicable)
附属書B(参考) リスクモデル(ALARP)及び許容リスクの概念
B.1 概要 この附属書では、許容リスク達成のための特定のアプローチを考察する。その方法について厳密な説明を行うことではなく、一般的な原理を示すことを目的とする。この附属書で示されている方法の詳細については、それぞれの引用元の文献を参照されたい。
B.2 ALARPモデル(1)
B.2.1 はじめに A.2では、産業活動によるリスクを抑制するための主な試みについて示し、その業務には次の事項の決定を含むことを指摘している。
a) 当該リスクは大きすぎて全く拒否される、又は、
b) 当該リスクは小さすぎる、又は小さすぎるとみなされる、又は、
c) 当該リスクはa)とb)の中間で、かつ、そのリスク水準を受け入れることによる便益及びさらに軽減する費用の両面を考慮して、現実的な最低限の水準まで軽減されているか。
c)に関して、ALARP原理は、すべてのリスクは合理的に実行可能な限り、すなわち、合理的に可能な最低の水準(ALARP: As Low As Reasonably Practicable)まで軽減されなくてはならないとしている。あるリスクが二つの境界(すなわち、許容できない範囲と広く受け入れられる水準)の中間に位置していて、ALARP原理が適用されると、結果として得られるリスクは、当該適用にかかわる許容リスクとなる。この三つの領域に分ける考え方について附属書B図1に示す。
ある一定レベルより大きなリスクは、許容できないとみなされ、通常のいかなる状況においても正当化することはできない。
上記の水準の下方に、もしある業務に関連して発生するリスクが合理的で現実的な最低限の水準まで抑えられているならばその業務か許される、許容領域が存在する。ここでいう許容できるとは、受容することとは異なる。許容できるということは、便益を確保するために、付随して発生するリスクを進んで受け入れようとすると同時に、そのリスクについて常に検討を続け、抑制していくことを期待することである。この領域では、更に安全対策を実施するためにかかる費用と、その安全対策の必要性などとの兼ね合いをみるために、費用と便益についての評価が必要である。リスクの大きさに比例して、リスク軽減のための費用は大きくなると予想される。許容できるぎりぎりの線では、便益に比べて過大な費用も正当化されるであろう。ここでは、リスクは定義から相当なものとなり、わずかなリスク軽減しか達成できないものであっても、相当な努力が正当化されることが必要である。
リスクが小さくなれは小さくなるほど、リスクを軽減する費用は比例して小さくなって行き、リスク許容領域の最下部では、費用及び便益の均衡か達成される。
許容リスク領域より下の小さなリスクは、ほとんど重大な影響がないとみなされ、それ以上の改善のための対策は必要ないとみなされる。この領域のリスクは、我々すべてが日常的に経験するリスクと比較しても小さいリスクであり、広く一般に受容されるリスク領域である。リスクがこのリスク領域にある場合には、ALARPを証明するための詳細な作業は不要である。しかしながら、リスクレベルがこのレベルにとどまっているかを注意深く確認する必要がある。
注(1) ALARPは、As Low As Reasonably Practicableの略である。すなわち、合理的に実現可能な最低の水準を意味している。
引用文献:
JIS C 0508-5:1999、電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全
―第5部:安全度水準決定方法の事例
(発行所:財団法人 日本規格協会)