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4. 安全評価方法

 

システムの安全構築の構造を図として、次ページに示す。対象要素が機能を果たす『信頼性』、及び事象の持つ危険性と利便性を、関係者と社会が共に考え得る、また透明性を持ったコミュニケーションである、『リスク コミュニケーション』により得られる『安心』により安全が得られる。(付4-4参照)さらに、船舶の安全には、自然や交通などの環境が動的に変化する、長時間にわたるマン マシーン システムとして『ヒューマン ファクター、人的要因』が重要な要素となる。本章では、安全を評価するに際しての手法について述べる。

安全評価は、リスク アセスメントと安全の受容を定める方法に分けられる。評価手法には、要因の関係を簡明に理解し解析できる、グラフ ネットワーク理論が主として用いられる。主要な手法を付3に概説する。

リスク アセスメントは、人、財産、社会及び環境にリスクを与えるハザード事象を確認し、利用可能なデータや専門家の経験により、系統だった手法でリスクを推定評価することである。

ハザード分析手法には、過去の事故の統計値が活用できるような場合には、例えば船舶事故から衝突事故の重要性を評価するような場合には、演繹的なFTAなどが用いられる。事故統計が用い難い場合は、専門家によるハザード事象の特定を基に、一般的なリスクへの影響を分析する帰納的なFMEAなどが用いられる。既存の規格類とその実績が参考になる場合もある。ハザードの大きさとその発生確率が分析評価に際してキーとなる。

リスク アセスメントにより、後述する方法により検討して、特定のハザードが受容を満たさない場合、ハザードの大きさかその発生確率を低減させるような、安全対策、方策を検討する必要がある。同方策の策定に際し、費用便益的判断等には十分配慮すべきである。ユーザビリティーを配慮して、専門家などにより方策のいくつかの案を策定して、前述した手法などにより、リスクの低減度合いを確認して選択し採用する。

特定したハザードの分析により、それを評価して受容可能かどうかを定める必要がある。その判断は、『ハザードによる被害発生の蓋然性とその程度』によるが、考慮すべき事項は多岐に渡る。付4-2、3、4、5に詳細に論じたように、ヒューマン ファクターを十分に考慮したユーティリティーとユーザビリティーは基本的なことである。安全方策の策定と決定に際し、実機ベースのプロトタイプによる機能確認や実船実証実験などの活用が望ましい。

システムの許容安全の設定には、ALARP(As Low As Reasonably Practical)が基本の許容概念である。主な手法は、付3-bに概説したように安全度水準(SIL)の決定には、影響の大きさと発生確率の積で評価する定量的評価の他、リスクの有意な等級付けと適切なパラメーターの採用を基礎としたリスクグラフやリスク マトリックスなどの定性的な方法がある。

また、本基礎調査では、許容安全の設定に対し、船舶に適合したランキング システムを提案した。(付4-5)骨子は、船舶運用システムを社会ニーズに合わせ、ライフサイクルに渡るリスクアセスメントに基づき、適切な設計、検証、認証及び運用を行う事である。各プロセスに数量評価を与えて、システムの安全尺度を、関係者、社会に公開提示し、社会の安全に貢献する事である。

 

 

 

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