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船舶の安全システムの評価に関する基礎調査

統合船舶コントロールシステムの安全設計・評価の為のガイドライン

Guidelines for Safety Design and Assessment on Integrated Ship Control System

 

1. 要旨

 

1-1 ガイドライン作成の背景

人間と機械システムとの共存は不可欠となってきており、日常生活だけでなくプラントの運転や船舶運航等安全かつ効率を重視した局面においても重要な課題となっている。しかし、人間の活動を補佐・支援するこれらの機械システムに対する従来の規則類では、その機能・性能の評価に片寄ったものが多く、ユーザーである人間の操作・運用を考えた全体システムとしての配慮や事故に直結するような不都合事象に対するリスクの解析は疎かにされてきた。

現在、船舶の安全かつ効率的な運航を支援する統合ブリッジシステムに、離着桟支援システムやトラッキングコントロールなどの機能が付加されつつある。これらの機能が目的どおりに果たされるためには、ユーザの使用形態に配慮し、運航管理を含めた運用形態と使用機器の安全機能を合理的に評価し、その結果をシステム・製品と運航に反映すべきである。

近年の情報化の中で生じた幾つかの事故の例では、製造物責任(Product Liability)法及びDependability、Accountabilityが議論されており、一層厳しく、製造者や運航者の責任が問われるようになった。安全に対し十分合理的な評価を行うこと及びその指針となる手法と評価基準を確立することが強く求められており、ユーザの希望を取り入れ、ヒューマンエラーの防止や運航管理を含めた運用形態を考慮した機能設計を行うための手法を明確にする必要がある。

 

1-2 現状と問題点

安全評価に関する規則面での進化は、ISO/IEC Guide 51を皮切りとして、機械関係でのISO 12100/JIS B 0008/9、電気関係におけるIEC 61508/JIS C 0508及び船舶での規則作成に特化したIMOのFSAなど、ここ数年活発である。各分野で草案作成と規則の発行が行われており、厳格責任主義に基づく「安全配慮への責務」も言及されている。航海支援システムなどの海事部門のシステム設計と運航に対しても世界のすう勢に歩調をあわせるべきである。

現在、航海支援システムは、高度化する情報化技術を取り入れながら進展を続けている。これらの機能による安全かつ効率的な運用を保証する必要があり、全体システムとしての安全性並びに、個々の機能、運用の特性に十分配慮して本来の機能を発揮させることが肝要である。

 

1-3 提案の内容

事故原因の約80%を占めるヒューマンファクターを十分に配慮したエラーの影響拡大防止、全体システムを考慮したシステム・製品設計プロセスについて、その透明化及び安全評価のためのガイドライン策定を目的とする。国際規則に合わせるとともに、定性評価やランキングシステム等を取り入れて、製造者、設計者、使用者及び第三者の合理的な合意による海事部門の安全評価の一元化を図りたいと考えている。

 

 

 

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