労働力に関しては、造船所と企業内組合との関係は良好で、労働争議は発生していない。従業員総数は約15,000名で、その高齢化は日本と殆ど同じような状況にある。通貨リンギットの価値変動により造船業は悪影響を蒙っている。一般に国内造船所は政府の発注と政府関係機関からの発注で潤っている。また造船業に影響を及ぼす内部要因についても説明があった。
報告者は次いで設計技術の不足に触れ、そのため最終的品質、建造期間、コストが大きく影響されることを指摘した。建造技術については、大型造船所ではコンピュータ制御のNC切削機械を導入して、さらに品質、精度、スピード、コストの改善、廃材の削減を図っている。
資材、その他の支援産業については、国内サプライアーが不足していることから、遠距離の他地域から調達するため、納期の遅れ、在庫品の増大、余分な輸送費などの問題が生じる。国内のディーラー、メーカーの育成努力が進められている。
Gomez氏は政府の造船業支援戦略についても簡単に触れ、海運・造船業に提供されている各種の金融措置について説明した。また新造船・修繕船事業に対する国内銀行の各種融資制度についても述べた。最後にマレイシア造船業についてSWOT分析の結果を示し、さらに同業界が今後前進を遂げ、健全な産業として生き残るために採用した戦略を紹介して、プレゼンテーションを結んだ。
質疑
マレイシア代表:ただ今、紹介されたペーパーは大変興味深い。好奇心から、造船業について一つお訊ねしたい。業界の制約条件をいくつか挙げられたが、MITIが造船・修繕船事業についていくつかの提案をしたのを記憶している。制約条件の下では、比較優位があまり望めないことから、マレイシアは新造船よりも修繕船、あるいは中小型船の建造の比重を高めるべきだと指摘された。基本的にいって、修繕船事業でのチャンスをさらに捉えるためには、この方向への動きをどの程度進めるべきとお考えか。
私は新造船離れを説いたわけではない。競争力をつけて、市場で生き残るために、できることはいろいろある。例えば、金融も含め、何もかも込みのパッケージを顧客に提供するようなシステムもある。第2に、現場の再調整作業を削減するため、できるだけ多くの要素をオフィスであらかじめ考えられるように、コンピュータ・システムを導入して生産性を改善しなければならない。そうすれば生産コストを大幅に削減できる。その他の措置としては、労働者の研修、詳細計画、調達先を全世界に求める、サプライアー/パートナーとの戦略的アライアンスなどがある。
インドネシア代表:海事産業委員会について明確に知りたいことがいくつかある。これまでの進捗状況と委員会の主な任務についてもう少し詳しくお話頂けないか。