本試験は、船舶の針路安定性の度合を試験するものであって、今、舵角をθ、船の長さをL、旋回半径をRとおくと通常の舵効きのよい船ではFig.1に示すように右に舵をとれば船は右に、舵を中央にすれば直進するから、実線Aに示すような旋回をする筈である。しかし実際にできた船は船型、舵の効き、その他によって多小点線Bに示すような動きをする船舶もある。即ち右旋回をしている時は、舵角をθにしても依然として右旋回を継続し、左舵角をかなりとって始めて左旋回に入る。(図では4度)一方、左旋回をしている時は舵角をθとしても左旋回を止めず、可成りの右舵角をとって(図では5度)始めて右旋回に入る。このように、舵を右にとっても、船は左に旋回しているような船は、いっも「ふらふら」しており、進路が不安定である。そしてこのような船は、当然のことながら事故を起こし易い。この不安定状態の有無を調べるのが、スパイラル試験であって、図の場合では、舵角を右10°から左10°の間で、1°か2°位の間隔で何度も旋回試験を行ってL/Rを求めて調べるのである。この図を見てもわかるように、θが大きい所でL/Rが大きいことは旋回性能が優れていることを示し、又θが小さい所でL/Rが大きい場合や勾配が大きい場合は安定性がよくないことを示し、原点付近の不安定ループの全幅が20°に及ぶと、操船に著しい困難が認められている。この方法は進路安定性を見るに都合のよい試験であるが、時間や人手を多分に要するので、総トン数1,000トン未満のカーフェリーについては、スパイラル試験を簡易スパイラル試験に代えてもよいので簡易試験の要領を次に示す。
2. 要領及び計測事項
(1) 舵を右10°に保って約1分間旋回した後、舵を中央に戻す。この状態のまま約2分間乃至4分間続航して(旋回角速度が十分に整定して)30秒間の船の方位角の変化を読む。即ち、方位角の変化が30秒間の回頭角であるからω=回頭角/30秒が求まる。この場合ω=0であれば、それで本試験は終了し、針路不安定のない船といえる。
(2) ωがある船については(1)の読取りが終ったら、直ちに舵を左2°とし、この状態のまま約2分間続航した後、約30秒間の方位角の変化を読みとる。
(3) (2)の読取りが終ったら舵を左4°とし、同様にして方位角の変化を読む。かくして、船が左旋回に入るまで続ける。