この定常な円運動を定常旋回と呼び、速度・偏角・角速度がすべて一定となり、重心の軌跡は円となる。
速度の減少は転舵前に較べ最初は急激で次第にゆるやかになり、第3期で一定速度になる。
2.5.4 旋回中に作用する力
旋回初期には舵角θに相当する舵圧が作用するが、船が旋回を始めると、舵に当る水流が舵角より小さな角度になると共に船の速力が減るから舵圧は低減する。
水抵抗Rは斜め後方に向って作用するが旋回初期にはその作用点Cは重心(G)よりずっと船首寄りの前方にあるが、旋回角速度が増すと共にRは大きくなり、かつ作用点Cは船尾の方へ移動し、定常旋回状態では重心(G)より少し船尾よりに位置するようになり、舵の旋回モーメントと釣合うに至る。第2-17図において、
m1=旋回中の見掛けの質量係数(1.10〜1.30)
W=船の排水量(kg)
φ=偏角
PD=舵の抗力(kg)
RX=水抵抗のx軸方向分力(kg)
R=船の水抵抗(kg)
t=時間(sec)
ν=船の重心の接線速度(m/sec)
T=プロペラのスラスト(kg)
PL=舵の揚力(kg)
Ry=水抵抗のy軸方向分力(kg)
g=重力の加速度(9.8m/sec2)
ρ=旋回半径(m)
旋回の運動方程式
2.5.5 旋回による横傾斜モーメントと船体横傾斜
(1) 横傾斜モーメント
第2-18図に示すように舵圧(Pn)の作用により旋回初期には内側に小傾斜するが、間もなく旋回による遠心力のy軸方向の分力によるモーメントが舵の揚力(PL)によるモーメントに勝って旋回外側へ船を傾斜させる、この際にRyの作用点(Q')が支点となる。