第16章 防熱、内張、仕切装置
16.1 一般
16.1.1 防熱の目的
船において防熱を必要とする場合は、次のとおりである。
(1) 居住性、作業性を快適にする。
(a) 居室、公室、作業室など外気にさらされる場所。
(b) 機関室、補機室、調理室など区画内に熱源があるものに隣接する居住室、作業室。
(c) 暖冷房を施した区画から他区画への熱拡散を防ぐ場合。
(d) 加熱される燃料タンクに、居室、作業室、貨物倉が隣接している場合。
(e) 蒸気管が導設される場所。
(2) 冷蔵庫、冷蔵貨物倉など、内部に格納した食料、貨物などを適当な温度に保持する。
(3) 機関室、煙突など高熱のため火炎、延焼のおそれのある個所の耐火を目的とする。
(4) 電気室、電気機器の格納場所の温度上昇を防ぐ。
(5) 隣の区画との温度差による結露を防ぐ。
16.1.2 熱の伝導
熱が伝わる状態に次3種類があって、それぞれの割合(率)が異なるので簡単にその説明を掲げておく。
(1) 熱伝導率(λ)kcal/mh℃
これは物質内部において、分子から分子への熱の伝わる割合である。
物質内に1mの距離にある平行平面を考えたとき、両平面の温度差1℃ごとに1m2の面積を通過して1時間ごとに平面に直角に流れる熱量である。
数値は、物質によってちがう。(16.1.3参照)
(2) 熱伝達率(d)kcal/m2h℃(放熱係数)
これは液体又は気体と、固体表面との間の熱の授受の割合である。
流体と固体表面との温度差1℃ごとに、毎時固体表面1m2を通過する熱量である。数値は、静止空気の場合d≒3、管内を流れる水又は蒸気の場合、d≒40,000にもなる。
(3) 熱通過率(k)kcal/m2h℃(熱貫流率)
これは2種の流体が固体壁を隔てて授受する熱量の割合である。