また、マワシ溶接は先に述べた様に、身体の向き等がかわるため、ともすれば第5.22図のごとく、不等脚長になりがちであるから、十分注意するようにしなければならない。
5.3.3 溶接作業における安全と障害
(1) 感電
溶接作業における最も危険な事故は感電による電撃死である。件数も多く、大部分が夏季に発生している。身体に汗をかいたときは人間の身体の抵抗値は大幅に下り、容易に大きい電流が流れるからである。そして、感電部位として、ホールダーの部分に触れた場合が、相当部分を占めていることから、ホールダーについては必ず、安全ホールダーを使うようにしなければならない。また、最近は、電撃防止器が普及してきて、無負荷電圧を下げているので、この装置を使用する限り、感電による事故死の数は大幅に低下している。
(2) 眼の障害
件数として多いものは、赤外線、紫外線及び視光線によるいわゆる電気盲である。少々のアークは大丈夫等ということは最も危険であるから、必ず規定のしゃ光眼鏡を使用するようにする。
(3) 火傷
スパッターによる火傷の他に、アークの光による火傷がある。いずれも、皮膚の露出部分をなくするようにすると共に、衣類の重ね合わせ方で、スタッパーが、身体の中に入りこまぬような工夫が必要である。足元から入ったスパッターは靴の中に入らぬように、足カバーをズボンの下につける等の対策をしておくこと。
(4) 亜鉛蒸気
亜鉛メッキされた板の溶接等をやるとき、亜鉛部分の除去が不完全であったりすると、亜鉛の蒸気にやられて、中毒症状を起こすことがあるから注意する。また塗料もよくその組成を調べて、確かめておかないと有毒成分を発生するものがあるかもしれない。
5.3.4 変形防止と応力除去
溶接作業による変形には、第4章で述べたごとき、変形が複雑にからみ合って生ずるものであり、隅肉溶接を施した部材がフェースプレート側、又はウエブプレート側に曲るのは、次の理由による。第5.23図の(a)においては、ウエブプレートが大きいため、この部材自体としての中立軸(材料の伸び縮みしないと考えられる面−N・A)はウエブプレート側にあるため、隅肉溶接の収縮は全体をフェースプレートの方へ、曲げるように働くのである。