その後、溶接工作法を採用する場合の鋼材に対する研究が進み、例えばクラックが隣りの板から進行してきても、自分自身の板の中で、そのクラックを止めてしまう、非常に粘りのある綱材が製造されるようになったので、鋲接手をところどころ入れる代わりに、この種の高級な材料を、要所要所に使用することにより、鋲接手が廃止された。
しかし、でき上った溶接部は、欠陥のないものから、欠陥の多いものまで、また、後で述べるように溶接の欠陥にも種々なものがあるため、全く一つとして同じでき栄えのものはないといってよい。そして、また注意しなければならぬことは、溶接の欠陥は、鋲接手等と異なり、発見が非常に困難なことである。通常溶接部の検査には、外観検査と非破壊検査として放射線検査や、超音波探傷検査等が使用される。圧力容器であるボイラー等には、その性質上、X線やベーター線等の強力な放射線による数回の厳重な検査が行われるが、船殻の溶接に対する検査としては、その範囲が広いことと、また、非破壊検査が行いにくい個所が多いこと等から、X線等にて検査されるのも極く1部に限定され、大部分は外観検査のみとなる。外観検査とは、読んで字のごとく外側からのみ見るので、内部に含まれる欠陥、例えば、溶け込み不良とか、底部における割れ等は発見されにくい。このことから考えて、溶接の品質を確保することは、悪いもの、欠陥のでたものを直すのは勿論であるが、品質に対する大部分の注意を溶接施工前の監視、管理にそそがねばならないことになる。