3) これによると、船速と有効速度はIMS VPPとのよい一致を見せているが、ヒール角はかなり高めに出ている。これは、風が弱い状況で、セールを浅くなりすぎないよう調節し(後述)、やや落とし気味に走らせているためである。また実験時、乗員がヒールバランスを取ることをしていないことも、その原因のひとつである。ただ、若干差が大きいので、ぜひ実艇の復原力を確認したいものと考える。
4) 風洞実験報告書で既報の通り、本研究のために作成したVPPは、IMS VPPと比べて風速の低い範囲でヒール角度、船速、VMGとも小さく計算される性質があった。これは実際の帆走データとは反対の傾向である。その理由としては、本VPPに風が弱いことによるセール流体力の変化(乗員による調整)を取り入れていないからであり、そのため、風速10ノット未満では適用できないとしたのだが、実際にエキスパートセーラーは、このような軽風下では、セール形状的にはそう変わらないものの、落とし気味に走らせ方を変えていることが明らかとなった。
5) VMG値によれば、IMS VPPとの比較という比較的厳しい条件においても、現状でも予測通りの満足すべき性能であることが確認された。リギンやセールのチューニングをさらに行うことで、同じスピードでもより切り上がって走ることができるようになり、VMG値は増し、これ以上の性能が発揮できることが期待される。
5.3. ダウンウインド
1) 前項と同様、別紙の4枚のグラフを検討した結果、風速8ノットにおける帆走状態は以下の通りと推定した。IMS VPPの計算結果も付記する。