6.2. セール形状の考察(既報のセール開発検討書参照)
1) メインセール
写真を見てわかる通り、開発検討書で設定したよりも全体的に深めで、またドラフトも前寄りだが、これは許容範囲であり、マストがもう少し曲がればほぼ設定した数値となる。つまり、マストのコントロールによって微風から強風まで対応できるメインセールとなっていて、目標のひとつはクリアしている。
このように風が弱いときには、セールが深いのは悪いことではない(といわれている)。
3/4高さに比べて1/2高さがバランス的に深いようだが、これはマスト中央部のベンド(曲り)量が比較的少なめだからである。形状はスムースで、リーチの曲率も十分に小さい。
2) ジブセール(ミディアム)
写真を見てわかる通り、全体的に浅いセールとなっているが、これは風が弱いためにフォアステーのサギング量が少ないことによる。1枚のセールで風速の範囲を広げることを考えており、そのために若干浅めのセールにデザインすることはよく行われている。
また、セールのトップが浅くドラフトが後ろ寄りになっているが、現実的にはやむを得ないことである(セールの上端と下端はツマミを入れようがないので、原則としてドラフトは中央で、風が入るとどうしても後ろ目になる)。風速がもう少し上がり、マストのベンド量が多くなればドラフトは深くなり、設定した形状に近づくと思われる。
3) 全体的なバランス
マストにはわずかに前進したジャンパーストラットが設けられていた。風速が増してバックステーを引いた場合、マストのIポイントから上が長いこともあり、マストのトップが曲がり、ジブのサギング量も減らないことが考えられる。この結果、メインセールはトップだけが浅くなり効果的な深さ調節ができない。また、ジブも浅くなっていかない恐れがある。