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シミュレーションによると、最適セーリング状態は、g0とそれほど変わらない。性能はg0より1%強、s0より3%ほどVMG値で劣るだけであり、それほど性能面で不利ではないという結果になっているが、この点に関してはIMS VPPも同じ結論を出している。

 

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Fig.36 VPP計算結果比較(ダウンウインド)

 

4) スピンとジェネカーの比較

現象的には、迎角が90度では揚力Flが全て推力Fxになり、迎角135度で揚力Flと抗力Fdが等分にFxに寄与する。 Fig.41を見ると、迎角120度を超えたあたりから、ジェネカーの揚力の発生が落ちており、これがジェネカーが大迎角で性能の劣る理由である(迎角160度程度までスピンの揚抗比がやっと1を切る程度なのに対し、ジェネカーは140度を超えると大きく1を下回る)。

ジェネカーの場合、スピンポールに相当するものがなく、ラフを風上に持ってこれないため、シートを出しただけでは断面形状がスピンのような半楕円形にならず、エントリー部が有効に働かないのであろう。この観点からジェネカーのデザインに取り組めば、より高性能のものができる可能性がある。

なお、Fig.42にヨーモーメントを示すが、小迎角時にジェネカーはリーヘルムが強いことがわかる。ジェネカーのための設計資料として貴重なものである。

5) バウポールスイングの効果

バウポールはジブタックからの突き出し量が78mm(実艇1.25m)で、それを約20度回転することで、27mm(実艇で0.43m)タックを移動させる状態になる。

結論からいって、迎角140度以上の場合、バウポールの性能的な効果ははっきりしなかった(従って、これまでの検討はバウポールスイングを含めたデータを元にしている)。

しかしながら、ジェネカーがはらまなくなる限界を広げる効果は、明らかにあった。数値的にははっきりしないが、g0で150度、g1で160度なら安定してはらますことができるようになった。タックの風上へ移動する距離を迎角に換算すると、5.6度となる。

 

 

 

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