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従って、ローテーションマストは注意深く設計されたマスト断面と、風に合わせた調整が必要とされる。さらに、もし、ローテーションマストを採用しない場合、アップウインドの性能向上のためには、マスト断面を極力小さくすることも効果的であることがわかる。

ヨーモーメントについては、Fig.30、31にまとめたが、マストが大きくなるとウエザーヘルム傾向が出(マストの前後長さが長く、メインセールがその分後ろに付いていることに注意)、それをローテーションしていくとさらにウエザーヘルムが大きくなるという結果になっている。通常マストにおける風の流れとは、様相を異にしていることが考えられる。

5) アップウインドのまとめ

本実験により、オリジナルの設計より優れたセールプランが存在することがわかった。特に、m1+j1という組み合わせは、基準となるm0+j0と比べてセール面積が約5%小さいにもかかわらず、クローズホールドではより高性能であるので(少なくともVMGで0.6%)、省力化、つまり安全性の面でも推奨されるべきセールプランと考える。また、ジブのIポイントが高いことは、実艇ではサギングの減少に効果があり、強風での性能向上に寄与するものと思われる。

ジブセールの引き込みについては、クローズホールドについては、9度程度まで内側に引き込んだ方がよいことがわかった。

一方、メインセールを小さくし、ジブを内側に引き込むことによって、迎角の大きな状態、つまりクローズリーチでの性能劣化が考えられるが、それに対しては、メインセールのトラベラーやブームバングを使って見かけの風に合わせて最適にトリムすること、そしてジブを外側に引けるような何らかの調節装置を採用することで、実艇ではカバー可能と思われる。

さらに、根本的解決としてローテーションマストの採用が考えられる。この場合、マスト断面形等を工夫することで、よりメインセールを小さくできる可能性もある。

ハイカットのジブは風下側の視界を確保しやすく安全であるが、できればウインドウの工夫等の別な方法によって視界を確保する方が、性能上は望ましいといえる。

 

5.2. ダウンウインド(Fig.33-42)

1) 使用したセール

ダウンウインドについては、セールのラフの形状修正を何回か行ったため、実際の実験は1日で行った。

s0はほぼオリジナル設計通りのサイズを持ち、形状はオールパーパスと呼ばれる、特に不得意分野のない万能型のものとした。

g0はs0よりもIMS計算上は15%増しのエリアを持つが、実クロス面積はs0と同じである。バウポールを使用するジェネカーとしては決して大きなサイズとはいえない。

 

 

 

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