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M0+j0とm1+j1は同一の迎角でほぼ同じような揚力を出しているのだが、抗力の低い(船体固定軸に直せば推力の大きな)m1+j1では風上に高く切り上がって迎角の小さなセーリングをしている。特に、トリム変化に相当する有効迎角AWACは1度弱小さく、セールは若干揚抗比の高いところで使われている。 同様に、m1+j0においても迎角はわずかに小さい。これらからわかることは、

(1)ヒール時の抵抗増加、揚力の減少などの影響により、セールは基本的に横力が過大となり過ぎない迎角で使われる。視風向AWAについてもそうであるし、あるAWAにおいても、その迎角で最大横力の出る状態で使われることはない。有効迎角AWACはそれより小さく、つまりわずかながらセールをフラットにし、また風を逃がして推力横力とも減少させた、より揚抗比の高い状態で使われる。IMS VPPの出力結果においても、風速10ノットからフラットニング係数が入っており、この考察を裏付けている。

(2)どの程度有効迎角を小さくすればよいかは、迎角20から25度付近の揚抗曲線によって決まる。この例でいえば、m0+j0は他の2つと比べて全体的な傾きが水平に近く、有効迎角を小さくしても揚抗比はそれほど高くならない。これがm0+j0では迎角が大きめに出ていることの理由と考えられる。

(3)もし特性が同じでセール面積のみ変化させた場合は(つまり、迎角が同じでも揚力抗力とも小さい、あるいは大きい場合)、たとえば面積が小であれば、有効迎角はより高いところで使われる。これは本VPPの試算によっても確認されている。

 

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Fig.21 本VPP計算結果

 

これら3種類のセールの組み合わせによるヨーモーメント、水平方向の着力点(効果中心点)CExの変化については、Fig.22、23にまとめた。これらはセールプラン設計のための参考資料とすることができる。

3) ジブ関係のバリエーションについて(Fig.24−27)

m1+j1の組み合わせについて、ジブのリード角度を変えた結果を示す。「外」とあるのが標準を意味し、リード角度は約11.5度(オリジナル図面は11.6度)。「内」は約8.7度である。

「内」にした場合、迎角の小さい範囲での特性は良いが、大きくなると悪くなる。クローズリーチの性能は劣ることが予想される。シミュレーションでも、風速が上がりTWAが小さくなるほど、わずかに優位性を増していく結果となっている。VMG値は「外」に比べ、平均0.4%上がる。

 

 

 

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