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4.1. 特徴

本VPPは、Surge、Sway、Rollの三元連立方程式からなる静的釣り合いの式である。変数は艇速、ヒール角、横流れ角の3つであるので、初期値を与え、収束計算により近似解を求める。収束方法にはニュートン・ラプソン法を用いた。

全体座標系は船体固定軸を用いているが、セール、ハル、キールラダーの各要素は流れ軸によってモデル化し、全体座標系に組み込んでいる。多くのVPPではセールトリムを変化させることはできないが、本VPPではセールの相対評価を確実に行うため、アップウインドのセールについてのみ、迎角を変化させてわずかに風を逃がす効果をチェックできるように工夫した。

 

4.2. セールのモデル化

セールの特性は、迎角毎の揚力と抗力で把握するが、風洞実験においては微妙なセールトリムの違いは避けられない。今回は、ばらついた値の中で最も揚力が大きく、そして抗力が小さい状態を、その迎角における最もパワーの出る理想的なトリム状態として採用した。そして、各迎角間を通じてスムースな変化となるようにフェアネスをチェックし、修正を行った。ただし前述したように、実際のクローズホールドの状態である迎角25度付近を正確にモデル化するように留意したため、迎角が30度以上の実験点には必ずしもとらわれていない。モデル化の一例をFig.15に示す。

ダウンウインドに関しては、セールトリムの変化を扱わないので、船体固定軸を用い揚力の代わりに推力、抗力の代わりに横力をとって同様に扱った。

ヒールによるセール特性の変化は、実効迎角の減少分も含めて、揚力についてヒール角のcosの二乗で減少するものとした。 風速は水面上10mの高さが基準であるので、おおよそのセール面積中心高さを求め、1/7乗則により実効風速を換算している。

 

4.3. 水面下のモデル化

1998年から1999年にかけて行われた「日本の海に合った障害者用ヨットの開発」(社会福祉・医療事業団(障害者スポーツ支援基金)助成事業)報告書を参考に、基本的なハル特性をモデル化した。

キールラダーの特性は、造船設計便覧等にある一般的な翼の実験データを参考に、実効アスペクト比を設定して揚力および誘導抵抗を計算した。

キールラダーの表面積に起因する摩擦抵抗については、ハルの摩擦抵抗に付加する形で扱った。

 

4.4. IMS VPPを利用したチューニング

VPP自体のパラメータは、セール、ハルの特性の他には、排水量、GM値、水面下側面積、迎角1度あたりのキールラダー揚力係数、キールラダー実効アスペクト比、セール横力によるヒールレバー距離の5つと、比較的簡便である。

 

 

 

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