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形状については、迎角が30度以上になると、セール上半分の捩れ角が大きくなる傾向があった。これにより推力が落ちることが考えられ、必ずしも迎角に合わせたベストなトリムとなっていない可能性もある。これは模型の艤装の関係で、実艇ほどきめ細かな調節ができなかったことによるものである。ただし、迎角30度以上の状態とは、実艇のセーリングではクローズリーチである。今回は、アップウインドとダウンウインドの性能検討を主に行うこととし、クローズリーチの性能については定性的な考察を行うにとどめた。

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Fig.8

 

4. シミュレーション

風洞実験によりセール流体力の測定を行うことができるが、それだけでは試供されたいくつかのセールを評価することは、普通はできない。たとえば迎角や横力が同一で、推力のみ大きいというケースでは無条件に優れているといえるが、普通、各セールの特性には一長一短があり、船体やキールラダーとの組み合わせを考えなければならないからである。本研究では、評価のために計算機によるセーリング・シミュレーション・ソフトウエア(VPP)を作成した。

計算結果の評価については、冒頭で述べたように、実艇のセーリング状態で10および14ノットを想定した。風が強くなり、実艇ではっきりと「風を逃がす」状態については、風洞実験を行っていないため、評価の対象外としている。また、10ノット未満の弱風についても、実艇ではフルパワーでないため微妙にセール形状を調節しているか、あるいは風圧により自然に変わってくることが考えられ、これも対象外とした。

本VPPはIMS VPPを利用してチューニングを行い、信頼度を上げた。セールプランを変更した場合の評価について、IMS VPPの計算結果と本VPPの計算結果を逐一比較検討する予定であったが、IMS VPPの方が自動的にペナルティが入るような仕様になっており、それを切り離すことができなかったため、本VPPのみの結果を検討することにし、IMS VPPは本VPPのバリデーション目的に用いることにした。

 

 

 

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