4. シミュレーション
風洞実験によりセール流体力の測定を行うことができるが、それだけでは試供されたいくつかのセールを評価することは、普通はできない。たとえば迎角や横力が同一で、推力のみ大きいというケースでは無条件に優れているといえるが、普通、各セールの特性には一長一短があり、船体やキールラダーとの組み合わせを考えなければならないからである。本研究では、評価のために計算機によるセーリング・シミュレーション・ソフトウエア(VPP)を作成した。
計算結果の評価については、冒頭で述べたように、実艇のセーリング状態で10および14ノットを想定した。風が強くなり、実艇ではっきりと「風を逃がす」状態については、風洞実験を行っていないため、評価の対象外としている。また、10ノット未満の弱風についても、実艇ではフルパワーでないため微妙にセール形状を調節しているか、あるいは風圧により自然に変わってくることが考えられ、これも対象外とした。
本VPPはIMS VPPを利用してチューニングを行い、信頼度を上げた。セールプランを変更した場合の評価について、IMS VPPの計算結果と本VPPの計算結果を逐一比較検討する予定であったが、IMS VPPの方が自動的にペナルティが入るような仕様になっており、それを切り離すことができなかったため、本VPPのみの結果を検討することにし、IMS VPPは本VPPのバリデーション目的に用いることにした。