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当世高齢事情 NO.24

公証人 清水勇男

 

老い支度

 

遺産相続をめぐる争いが増え続けています。公正証書による遺言の件数も、世の中の景気とは違って、右肩上がりで上昇しています。遺言についての講演依頼も多く、なるべく時間をさいてあちこちへ出かけて行きます。全国どこの公証役場の公証人でも同じかと思います。

ただ、最近は遺言だけでなく、尊厳死など自分の死の在り方や、散骨を含めて自分の葬儀・埋葬などについての希望を公正証書で明らかにしておきたいという人が増えてきました。なぜでしょうか。たぶん、後顧の憂いなく安心して老後を過ごしたい、そして自分らしいフィナーレを迎えたいという気持ちからではないでしょうか。「安心」と「自立」、それがキーワードのようです。

そこで、講演のテーマを従来の「遺言」一本から「老い支度」に広げ、老いの不安とその解消のための方策という方向にシフトを拡大してみました。先行きの見えにくい時代であり、背後には少子・高齢化社会という、これまでの日本が経験したこともない深刻な問題が控えているので、快刀乱麻というようなわけにはいきません。

最近の講演では、1]老いを迎える不安10章、2]豊かな気持ちで老後を迎えるための基本的な心構え、3]健康と財産の保持のための方策、4]遺言による遺産の指定配分、5]葬儀やお墓などの死後事務、などと分けて話をしています。参加者は高齢者がほとんどです。この中で、参加者が一番熱心に耳を傾けてくれるのはどの項目だと思われますか?

 

 

 

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