老いの住まい No.12
本間郁子
特養ホームのグループホーム
グループホームと介護保険
旧厚生省が痴呆症の老人を対象にグループホームのモデル事業を始めたのが1994年だった。国も当初は、特養ホームに併設するグループホームを積極的に推進しており、モデル事業としていち早く取り組み始めた施設が6年経った現在、どのような経過をたどってきたか訪ねてみた。
居室が3つのフロアに分かれている特養ホームの1つのフロアに増築されたグループホームは、ドアで仕切られ側に大きな犬が心地よさそうに寝そべっていた。ドアを開けながら「こんにちは」と声をかげると、側で寝ていた犬が誰だと言わんばかりに重いまぶたをうっすらと開けて私たちをチラッと見たが、面倒臭そうにまた寝てしまった。
居間のソファーに座っていた一人の女性が、すぐに立ち上がってきて「あらっまあ、よくいらっしゃいました。どうぞ、どうぞ」と私たちをリビングに案内した。
その女性は、茶のスカートにあったかそうなグレイのモヘアのセーターを着て、首にはスカーフを巻いていた。髪にはパーマがかかり、櫛がきちんと入っていた。言葉も丁寧で、笑顔で迎えてくれる態度に親戚の家を訪ねたような気持ちにさせた。手馴れた感じでテーブルの上の急須を引き寄せお茶葉を入れてポットから湯を注いだ。湯のみにお茶を入れて「粗茶ばかりで何にもありませんけど、どうぞ」と私たちにすすめた。