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介護保険は、ある意味では市民革命といえます。福祉が社会主義的な供給体制から、市場経済に移行したのです。これまで政策というのは、中央政府が担うという認識がありました。ところが、全国の市町村が介護保険事業計画を作る過程で、かなりの市民が参加しました。介護保険は、自治体レベルで微妙な手直しができるという意味で地方分権の新しい試みだと思います。

 

むずかしいサービス評価

 

今後、事業者が提供するサービスへの評価が問題になると思うのですが…。

 

まず行政による評価はむずかしいと思います。法令に違反しない限り、行政は企業活動に介入することはできません。逆に介入すべきでもありません。行政が一定の価値観を持つと、サービスを画一化する可能性があるからです。

サービスの質は、市場の評価、つまり消費者の選択の結果で決まっていくものであって、どこか一つの機関が客観的に評価できるようなものではありません。たとえば欧米のホテルは星の数で評価しますよね。でも、いくら評価が高くても、自分にとっては良くなかったということがままあります。つまり、サービスというのは非常に主観的なもので、その意味では評価機関はたくさんあったほうがいいのです。

さらに、評価するということは、その評価に見合った報酬とか経済的な便益がなければ意味がありません。福祉の場合には、単価が決まっていますから、いくら施設の評価が高くなったからといってスタッフの給料が増えるわけではありません。これが医療だと、たとえば適時適温の食事の提供や、施設のアメニティー部分の拡充で点数は上がり、評価が高くなります。福祉でも医療のようなかたちになってくれば評価することに意味があるかもしれません。つまり、何のために評価するのか、その目的を明らかにすることが必要なのです。

今、世間で言われている評価というのは、この部分をごまかし「評価=利用者が選択するための情報を与える」ということになっています。単に情報を与えるのであれば、情報開示をちゃんとすればいいのです。評価のためにコストをかける必要はありません。厚生労働省は各地で評価のためのモデル事業を行っていますが、施設はそのために人手を割くわけですから大変です。

 

 

 

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