紆余曲折を経て、昨年四月にようやく産声を上げた介護保険。その成果を研究者の立場で見守り、よりよい介護保険に向けて各種研究会やセミナー、マスコミの場で持論を展開してきた関西学院大学径済学部の大谷強教授(担当料目は社会保障論)。氏に、この一年を振り返ってもらい、介護保険に対する全般的な評価と、今後取り組むべき課題について聞いた。
(聞き手・高山歩)
強い事業者の不満
介護保険が始まっておよそ一年が経ちました。ご感想は?
厚生省(当時)が「走りながら考える」といってスタートさせた介護保険ですが、比較的うまくいっているのではないでしょうか。各自治体が昨年の夏ごろに実施したアンケートによると、制度全体に対して八割くらいの人が「満足」と回答しました。また、厚生省は要介護認定の苦情について審査会をつくりましたが、二%くらい苦情が出ると予想したところ、実際には○・一二%しかありませんでした。