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市民主導で策定したビーナスプラン

 

そもそもエリア構想は、福祉の相談窓口が複雑でよくわからないという市民の苦情がきっかけで生まれた。そして、こうした市民の声が生かされる土壌をつくったのが、「茅野市の21世紀の福祉を創る会(通称・福祉21茅野)」とそこから拡大発足した「やらざあ100人衆」という名の市民団体の四年間にわたる活動だ。

「福祉21茅野」は一九九六年三月、保健、医療、福祉の連携を目指して、医師会、薬剤師会、看護協会、民生委員、ボランティア団体、社協、JA(農協)などの二一人の委員によって設立された。その前年に「パートナーシップのまちづくり」を掲げて当選した矢崎和広市長の呼びかけに応じたもので、福祉分野の一二の専門部会を設けて現状の問題点を洗い出すところから活動が始まった。専門部会で広く市民の意見を集め、改善の提言をまとめる過程で生まれたのが「やらざあ100人衆」だ。諏訪地方の言葉で「さあ、やろう」を意味する。実際には一〇〇人を上回る一八○人の市民がここに結集し、高齢者をはじめ障害者、子供を取り巻く課題を解決するための調査活動やヒアリング、懇談会などに無報酬で携わった。

こうした市民レベルの活動が原動力となって、九九年一月には市の総合的な地域福祉計画を策定する「茅野市地域福祉計画策定委員会」が三一人の市民委員によって設置され、一年余りの検討を経て二〇〇〇年三月に「福祉21ビーナスプラン」が答申された。二〇〇○年から二〇〇九年まで一〇か年の地域福祉計画で、誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指す。

ビーナスの名は、八六年に市の棚畑遺跡から出土した約五〇〇〇年前の土偶「縄文のビーナス(国宝)」に由来している。社会福祉事業法の改正(社会福祉法)で、市町村は二〇〇三年までに地域福祉計画の策定を義務づけられることになったが、ビーナスプランはこれを先取りするものだ。

 

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北部保健福祉サービスセンター。クリニックの医師のチェロ演奏を楽しむデイサービスの人々。

 

 

 

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