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さらに、慣れない仕事でただでさえ疲労困ぱいしている上に、早番、日勤、遅番、夜勤といった不規則な勤務時間帯。これも体にはこたえたとも。

「二〇歳の同僚は、夜勤明けでも二、三時間寝たら、遊びに行くといいますが、私は夕方まで寝ても疲れが取れない。こういうところにも、年齢のハンディをひしひしと感じてしまいますね(笑)」

 

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歓迎会にて。職場には20歳の同僚もいる。

 

介護職は人間性を取り戻せる仕事

 

自分で選んだ道とはいえ、恐らく、その大変さは心身ともに想像以上のことだったろう。

「板前のままでいたほうがよかったと思うことはありませんか―?」、そんなちょっぴり意地悪な質問を鈴木さんに投げかけてみた。

「確かに仕事は以前に比べてハードだし、下のお世話だってしますから決してきれいな仕事とはいえない。しかも、痴呆症状があるとか、飲み込みがうまくできないなど、ほとんどの方が何らかの問題を抱えていますから、その方の問題点をしっかり把握しておかないと誤った介護になってしまう恐れがあるから、一時も気は抜けません。でもね、だからといってこの仕事を選んだことに、後悔はまったくないんですよ」

穏やかな口調の鈴木さんが、この時だけはきっぱりと言い切った。そしてその一番の理由として、「人間性を取り戻せる仕事である」ことを挙げた。

「お年寄りの命を預かっていると思うと、その場、その場が真剣勝負。

 

 

 

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