日本財団 図書館


この間、北海道から沖縄までの三九三四人から資料請求があり、そのうち二〇〇人が利用の申し込みをした。そして契約に至ったのは九五人(二〇〇〇年十二月現在)。定年離婚や熟年離婚などの増加で、実は六〇代後半の男性の契約率が伸びているという。生前契約の執行機関がNPO法人化したことによって社会の認知が進み、NPO決済機構に対する金融機関の信頼性がアップしたことも大きい。明治生命はNPO決済機構を受取人とする生命保険で、このほど保険金を支払った。

こうした社会的認知と共に利用者の拡大が予測されるが、同時に課題も見えている。まずは何よりもニーズに対応できる生前契約アドバイザーと、契約を履行する指定登録事業者の絶対的な不足である。アドバイザーの養成については全国各地で「生前契約アシスタントアドバイザー登録者起業研修」を実施し、二〇〇〇年十二月現在、九八人がアシスタントアドバイザーの資格認定を得ている。

しかし、生前契約アドバイザーとして依頼者の意思の実現をサポートするためには、人格と見識、経験など人間としての成熟が求められるだけに、アシスタントアドバイザーが一人立ちするまでには多くの時間がかかる。宝塚市の、めふのお家には現在七人のアシスタントアドバイザーがいるが、NPO決済機構から正規のアドバイザーとして指定を受けるまでには至っていない。

 

生前契約と任意後見制度

 

元気なうちに死に至るまでの生活支援と死後の事務処理を契約しておくという点では、昨年4月に制度化された「任意後見制度」もいわば同様だ。痴呆や知的障害などで判断能力が低下した成人の権利を守るために制定されたこの「成年後見制度」の中で、財産管理や日常生活を支援してくれる後見人をあらかじめ自分の意思で選べるのが「任意後見」。判断能力があるうちに信頼できる後見人を選んで、将来の財産管理なとを契約によって依頼する。司法書士会や弁護士会が後見人を育成して、依頼の受け皿になる活動を展開している。

後見人の仕事は、不動産や有価証券の管理、預貯金の出し入れ、介護保険の申請や利用時の契約、公正証書作成の立ち会いなど一身上のサポート。遺言の執行による死後の財産処理なども契約項目に含まれるが、NPO決済機構ともっとも違う点は、生存中の後見事務にウエートが置かれている点だ。費用は契約した項目によって異なるが、平均的な後見事務と月1回程度の面談で月額2万8000円程度が相場のようだ。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION