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人材の養成を急ぐ余り、質の確保がおろそかになってはいけないのは言うまでもない。昨春、介護保険と同時にスタートした成年後見制度は、元気なうちに老後を託す後見人を自分の意思で選べる任意後見システムを持つが、この制度では後見人の適否を家庭裁判所が審査する。生前契約アドバイザーの場合はこうした家裁によるチェック機能を持たないだけに、アドバイザーの指名にはNPO決済機構側の十分な見極めが必要だ。

もう一つの課題である指定登録事業者も今のところ二か所のみ。りすシステムは今後、各地に「りすシステム−○○」(○○は地名)という名称でネットワークを構築していく計画で、地元の弁護士や公証人による拠点づくりを進めているが、こちらは早期の指定登録が課題だ。

さらにもう一つの課題が、NPO決済機構自体の財政問題だろう。営利目的の母体ではないため信頼性は高いが、一方で、その財政基盤は利用者からの申込金等が基本となる。外部からの寄付や健全な収益事業等を今後展開していくのか、利用者は一〇年、二〇年という長い単位で将来を託すが、万一思うように資金(利用者)が集まらない場合のリスクはどうなるのか?

生前契約へのニーズは今後ますます増えそうなだけに、NPO決済機構の役割は重要だ。「自分の死後」を託すために、どういったシステムがあればよいのか? そしてどう育てていけばよいのか?

家族の絆が薄れてきた今、二一世紀にゼロから皆でつくり上げていく新たな仕組みへの挑戦ともいえるだろう。さて、あなたはどんなシステムを望みますか、望みませんか?

 

 

 

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