非営利の生前契約等決済機構が誕生
生前契約という仕組みに基づいて、死を迎えるまでの生活支援と死後事務を託す人は年々増える傾向にある。その背景にあるのが少子高齢化や核家族化といった家族関係の変化で、かつては家族が担ってきた介護や看取りが、もはや今の家庭では担い切れなくなっている。子供がいない、子供が遠く離れて住んでいる、あるいは近くにいても人生の幕引きは自分の意思でと自立的な死を望む。
しかし、生前契約のニーズが高まる一方で、解決しなければならない課題も浮き彫りになってきた。
それは、1]生前に委託しておいたことが死後確実に実行されたのか確認することができない、2]仕事を受託した者は、本人の死後にお金をきちんと払ってもらえる保証がない、という極めて当たり前の問題だった。これらを解決するために取り組まれたのが、非営利で公益的な第三者機関をつくるということ。そもそも自分らしい死の設計をサポートする生前契約という理念からして営業行為では自ずと限界がある。
そこで、この分野で先駆的な取り組みを行ってきたこの(株)りすシステムの松島さんに加え、弁護士で元日本公証人連合会会長の田村達美さんや同じく弁護士の鈴木一郎さんなどの公的な専門家らが中心となって組織づくりが進行。二〇〇〇年二月に、NPO法人の認証を受けて日本生前契約等決済機構(以下、NPO決済機構)がいよいよ誕生した。定款では、NPO決済機構の目的を次のようにうたっている。「自己の人生を自立的に全うするに必要な、死後事務処理の受託、遺言執行、事理弁識能力(判断力)が不十分となった際の生活支援、後見、後見監督業務の受託等の事業を行い、社会的弱者の人権擁護を図るとともに、文化的で快適な生活の増進に寄与する―」