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自分一人で死に行く悩み

 

以前、本誌で「自分のお葬式」について特集し投稿を募ったところ(97年3月号・6月号)、多くの反響が届いた。「自分らしさ」を求めてユニークな形式を望む人から、静かに自然に消えたいと散骨を望む人、「地方の実態はまだまだで、自由にはならない」とあきらめの声を寄せる人などさまざまあった。あれから約四年、「死後の後始末」をどうするかについてはさらに関心が高まってきたようだ。高齢者の一人暮らしが増えたせいもあるのだろう。編集部にもそうした声や問い合わせが寄せられるが、特に女性からのものが多い。

「独身で定年まで働いてきて、贅沢をしなければ何とか暮らしていけると思っています。でも自分が死んだ後始末で、交流も少ない親戚や他人に迷惑はかけたくない。わずかな財産ですが遺言書も含めて、すべてきれいに片付けておきたいんです」(七〇歳女性)という自立派、また「姑にはさんざん苦労させられ、田舎にある主人の家のお墓にはぜったい入りたくない。ただお金はないので、信頼できる役所などで何とかやってほしい」(六五歳女性)という切実派までそれぞれに思いは深い。

こうした時代の声を背景に、「日本生前契約等決済機構」(田村達美理事長)というNPO(非営利組織)が誕生してきた。その説明の前に、民間でいち早く「生前契約」として広まってきたLissシステムをご紹介してみよう。

ここに六五歳で亡くなったMさんが書き残した手紙がある。Mさんは小学校の校長を務め上げ、乳がんで余命いくばくもないと知った時、生きている間に自らの意思で死後の準備をした。

「私は今、静かに終わりを待っています。がんに冒され薬で痛みを抑えるだけの毎日ですが、何の不安もありません。(中略)もやいの碑に私の名はすでに刻まれています。お墓ができたということで私は安心していました。

 

 

 

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