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Mさんが会社を抜け出し、母親に付き添うと落ち着きを見せた。しかし、呼び出しは頻繁になった。Mさんは思いきって仕事を辞めた。ヘルパーが週2回来て、デイホームに通うようになった。ショートステイも利用したが、夜は泊まって付き添うようにと施設に言われた。このようなショートステイの利用も家族にとって負担になってきたため、病院・施設探しを始めたのである。情報を集め、見学にもたくさん行ったが納得のできる場所はなかった。300人収容の老人病院では、「この病院はどこも引き受けない人たちを引き受けている。拘束はしますよ」とはっきり言われた。それから1年半、ある情報誌に紹介されていたグループホームを訪ねた。温かい雰囲気でお年寄りたちが落ち着いて生活している様子に「そこだ」と思ったという。自分の家と同じ6畳のタタミの間に家具を持ち込んで母親は入居した。今は、歩き回ることもなく穏やかに暮らしているという。会話も少し通じるようになった。「元気?」と言うと「元気よ」と答えるようになった。

ちなみに、都心で毎月の利用料は約19万円。家賃が7万、1割の利用料が3万、飲食費が4万、光熱水費・雑費が5万円だ。これだけ支払える経済力がないと民間のグループホームには入れない。誰でも入れる場所になるには、いくつもの問題を市民が真剣に考えなければならない。

 

 

 

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