老いの住まい No.11
本間郁子
「母親の居場所を探し求めて」
―グループホームと介護保険―
現在62歳の母親がアルツハイマー症とわかったのは、55歳の時だった。息子のMさんは、母親の症状の変化に戸感いながらも父親と二人三脚で7年間、在宅で見守ってきたが、とうとう在宅介護の限界を感じ母親の居場所を探すために必死で情報を求め、ようやく見つけたところは、家から近いグループホームだった。
Mさんの父親は飲食業を営んでおり、母親はそのお店の手伝いをしていた。50代にさしかかった頃、母親の様子がおかしいのに気が付いた。3人のお客さんにお茶を2人分だけ出したり、注文を間違えた。時には、砂糖と塩を間違えて調理し、それを注意すると怒った。また、父親が若い女性のお客さんと話しているのを見ると、興奮し大声で叫んで外へ飛び出して行くこともあった。朝一番に起きても何もせずイスに呆然と座っている。料理を作り始めると3日も4日も同じ料理を作った。みんなが本気でおかしいと思い始めたある日、決定的なことが起きた。親戚に頼まれて保証人になった母親は、銀行に行ったが自分の名前が書けず、困った顔をした。その様子に驚いて、父親がすぐに病院に連れて行った。医師からアルツハイマー症と診断された。
母親の症状は日を追って進行し、家を出ていくようになったので目が離せなくなった。お店が忙しい時は、部屋に閉じこめておくのだが大声を出したり戸を叩いたりする。父親は困り果てて息子のMさんの会社へ電話する。