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むろん、入ったその部屋が井戸端会議場になっています。座布団もお茶請けも全部整っていて、座ったら、即「会議」ができるようになっているのが「開いた家」の共通の特徴といえましよう。あの「縁側」を思い浮べました。一応は「家の中」なのですが、実質的には「縁側」に近いのです。

開いているのは「家」だけではありません。自宅を井戸端会議場に開放している人のほとんど百パーセントが「あけっぴろげ」な主婦。家の中が散らかっていても平気で「入んなよ」と言える神経! 「自分で勝手にお茶を沸かしてね」と突き放せる神経! 客が来るからと、いちいち「よそ行き」の顔なんかしていられないと、腹をくくれる人といえましょう。

こう考えたら、個人宅よりも商店の店先などが、老人たちの井戸端会議場に選ばれるのも、当然のことかなと思うのです。まさにそこは「開かれた空間」で、しかもこういう商売をするぐらいの人ですから、もともと「あけっぴろげ」の人でもあります。

でも、団地なんかは「隣の人は何する人ぞ」で、とても近隣付き合いなんかできないという人もいますが、それでも井戸端会議ができているところもあるのです。カギはその階(大抵は階段を挟んで5軒ずつある)に1人「あけっぴろげ」な奥さんが居ること。

埼玉県川越市に住む知人のA子さん。健康のためにテニスを始めました。1人ではつまらないと、同じ階の9名の奥さんを誘い出す。「私は子連れだから」と尻込みする1人のために、みんなで子供の預け合い。「ついでに夫も誘おうよ」となって10軒の夫婦20名でテニス愛好会ができてしまいました。「あけっぴろげ」な人がいれば団地の「鉄の扉」なんか、簡単に打ち破ってしまうということなのです。

調査によれば、こういう「あけっぴろげ」な主婦は、少なくとも10軒に1軒は居るというので、その1人が動き出せばどんな都市部でも「井戸端会議」は開けるのです。

問題は男性。「開いた男性」は、残念ながら、全国を探し回っても、ほとんどいないという惨状! 前述の足尾町でも、私が見つけたのはたった1人。「かなり女性的な男性」だったというのが、私の印象です。企業時代にあれだけ営業などで「ひらく」訓練をしているのですから、ついでに「地域でもひらける」男性を育成してもらえないものなのか…。

 

 

 

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