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主治医は患者の生活が見える人

 

介護保険が始まって、にわかに主治医の存在がクローズアップされてきた感がありますね。

 

実は、介護保険における主治医とは、どういう医者なのかということが明確になっていないものだから、現場は大混乱なんです。介護保険を申請すると、行政から「主治医はどなたですか」と聞かれますね。そうすると、たとえば白内障で大学病院にかかっていれば、患者さんはそこの眼科の医師の名前を挙げますから、その先生が主治医ということになる。もちろん、眼科の医師でも意見書は書けますが、病状しか書けませんよね。意見書に書くべきことは二つあって、一つは病状がどうなのかということ、もう一つは“介護の手間”がどれだけ必要かということ。つまり、朝起きて夜寝るまで、あるいは一週間の生活の中でどの程度の介護が必要かということですね。主治医の意見としては、むしろこちらの記載が認定審査には重要なんです。

 

となると、主治医の要件は、日常の生活までわかっているお医者さんということになりますね。

 

そう。病状と共に患者さんの日常の生活を見られる医者であることが大事です。“介護の手間”を記載するには、普段の診療の際に患者さんの食事、排泄、入浴、外出、運動などの生活動作について様子を聞き、それに対して適切な対応や指導をしている医師でないとむずかしいでしょうね。日本医師会ではそういう医師を「かかりつけ医」と呼び、「かかりつけ医を持ちましょう」と提唱しています。

ですから、行政も主治医について尋ねるときには、「普段の生活のこともわかって意見書を書いてくれる先生はいますか」と聞くべきなんです。もし「大学病院にはかかっているけれど、身近にそういう先生はいません」ということになれば、医師会が地域の診療所の先生を紹介する「かかりつけ医紹介システム」もあります。

 

何でも話せるウマの合う医師を

 

かかりつけ医とは、具体的にはどういうお医者さんですか?

 

病気になったら真っ先に行くお医者さん、と言えばいいでしょうか。まず近くにいること。サラリーマンなら職場の診療所の医師もこれに含まれるでしょう。どんな病気でも診て相談に乗ってくれることも大事な要素です。そして、いつでも診てくれること。と言っても、一人の医師が三六五日、二四時間体制で診るわけにはいきませんから、休日や夜中の緊急時には地域の医師会が当番医を決めておき、そこで対応する。「かかりつけ医紹介システム」もそうですが、地域の医師の活動を支える医師会が、かかりつけ医をシステムとして支援するべく努力しています。

 

 

 

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