●大学生の息子から…「背中を流しながら、『長生きしてね』って言うことができたなら、父は死ななかったんじゃないかなって。ぼくは今とても後悔している」
残された家族たちは最愛の人を失った喪失感だけではなく、「なぜ救えなかったのか」という自責の念にまでさいなまれる。さらに、残された家族たちは、「自殺」したことによる周囲の偏見や差別にもさらされることになる。まさに三重の深い心の傷と痛みを感じているのである。
●大学生の子供から…「父親のことを話していて『自殺』という一言がなかなか口にできませんでした」
●妻から…「『ご主人は病気で? 事故で?』と聞かれるたびに、何と答えようと…重い十字架を背負わされ、何も言えずにうつむいている、そんな後ろめたい気持ちなのです」
●妻から…「夫が亡くなったとき、お世話になった方が、『彼の名誉のために自死ということを言わないほうがよい』とおっしゃいました」
自殺はこの社会では不名誉なこととして、タブー視されてきた。葬儀も身内だけでさっさと隠れるように済ませてしまうことが多いのだという。しかしそうした出来事は近所に必ず知れ渡っていく。その結果、互いの遠慮から次第に近所付き合いすら疎遠になっていくケースもあるようだ。本来ならば一番周囲の支えが欲しい時に、ますます孤立して、残された家族の心も病んでいく。自殺とは、そのことを明らかにしても、隠しても、偏見や差別から逃げることはできないのだろうか。