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ところが、前述のように九八年に自殺者が急増し、その率は前年の「一九」から「二六」へと一気に急上昇してしまった。この異常ともいえる自殺者の増加、日本を「自殺大国」に押し上げた大きな要因が、実は「中高年男性」自殺者の激増なのである。

 

自殺者の七割が男性

悩み解消上手な女性

 

警察庁の統計によると、一九九九年の自殺者三万三〇四八人のうち、四分の三が四〇歳以上。さらにそのうちの四割を働き盛りの四〇〜五〇歳代の人たちが占める。男女別に見ると、三万三〇四八人のうち、男性が二万三五一二人で全体の七割を占めており(前年比二・二%増)、一方、女性は九五三六人(同三・二%減)で男性の半分にも満たない。ただ「欧米でも男性の自殺者は女性の約三〜四倍」(高橋祥友著『中高年の自殺を防ぐ本』(法研)より)だというから、これは日本だけに限った現象ではないようだ。ではどうして自殺者は男性に多いのだろうか?

そもそも身体的な違いが影響しているという説もある。よく男脳・女脳といわれるが、そもそも動物脳がしなやかな女性は「生きる」ことにたくましく、良くも悪くも繊細な男脳は精神的な衝撃に弱い。女性は生物学的に、たとえ死にたいと思っても実際にはその衝動をコントロールできる能力があるというのである。

また女性の自殺が少ない原因として、「おしゃべり」を挙げる人もいる。事実、「いのちの電話」などへの相談も圧倒的に女性が多いという。個人差はあるだろうが、女性は比較的あけすけに自らの悩みを他人に打ち明け、そして心のストレスを発散させていく。ところが男性は、問題が起きたり、心配事があるとき、周囲に助けを求めることを潔しとしない。

日本社会に当てはめてみても、特に企業社会で男が脆さをみせるのはタブーでさえある。男らしくないと、自らもそして周囲も思ってしまう。そして「男」は誰にも悩みを訴えず(訴えられず)、黙って死んでいく。

 

 

 

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