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小山 全体としてみると日本の子供たちは閉塞感に押しつぶされているような状況ですが、でも決して悲観はしていないんですよ。というのも子供自身は、中高生などと接していてもボランティアにすごく興味を持っているのがよくわかるんです。私のベトナムの事務所には年間一千人近くの日本人が来るんですが、その内の約六割は女子大生です。もう大企業に就職して地位やお金だけを得ることに魅力は感じない。貧乏は嫌だけれど人に役立つ、充実感のある仕事をしたいと。健全な若者もちゃんと育ってきていてうれしくなります。

掘田 あとはそういう夢を可能にしてあげる社会を大人がどうつくってあげられるかですね。

小山 人に役立つことで幸せを感じる一番の前提となるのは個の確立だと思うのです。これまでの日本は全部組織で動いてきたでしょう。会社、労働組合、地域に帰れば町内会、隣が千円ならうちも千円みたいな、組織に埋没した五〇年。これからはまず個性が生かせるように、それが何よりも社会の幸せの基になるんじゃないか。そのための基礎として自分の個性を大切にできる社会、人と違っても自分がこれをしたい、そんな思いが生かされる社会をつくり上げていくべきだと思います。

掘田 (うなずきながら)私は「個の時代」と言っているのですが、幼い時から自立した意識を持てるようにしっかりと問いかけてあげる。「一番自分を生かせるものは何ですか? そして社会にも役立ち、そこから喜びも得られるために、何が一番あなたに適していると思いますか?」というように。学習というのは自分を発見する機会です。小学校、中学校でいろいろな学習をすることで自分を発見し、また新しい能力を伸ばし、そうして自分で夢をつくり上げていってほしい。それにはまず大人から率先して実行しろというのは大賛成です。最後にお伺いしますが、いずれは日本にお帰りになるおつもりですか?

小山 ええ。「ベトナムの子どもの家を支える会」ができた時の総会で、元々一〇年をメドに解散しようと決めているんです。

 

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