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巻頭言 No.35

二一世紀の幕開け

さわやか福祉財団理事長 堀田力

 

二一世紀の幕が開けた。

新世紀は、明るく希望の持てる世紀だろうか。それとも、人類が滅亡に向かう暗い世紀だろうか。

二〇世紀、われわれは、市民を巻き込んだ前例のない規模の世界大戦を、二つも経験した。暗い影が世界を覆った反面、月に足跡を記し、心臓移植までが可能となるなど、明るい光も、さまざまに差し込んだ世紀であった。

二一世紀も、発展途上国における地域紛争やカルト宗教の跋扈(ばっこ)など、暗い影を落とす出来事は絶えないであろうが、少なくとも、もう世界大戦は起きないし、地域紛争も次第に減っていくであろう。

今や、先進諸国は、戦争や紛争を自ら仕掛ける動機がない。経済が発展して、少子化した国民の生存を支えることができるから、他の領域を侵略する必要はないし、また、個人主義を基調とする民主主義国家となっているから、戦いに市民の生命をかけることには、容易に合意が得られない。発展途上国は、人口が膨張しているため、その生存を確保する必要から、戦争や紛争に走る動機は存するが、強大な軍事力を保有する先進諸国がこれを抑制するため、世界大戦にまで発展する恐れは、まずない。発展途上国も経済成長を遂げつつあり、それにつれ、少子化が進んで人口が減少し、また、民主化が進んで個人主義を基調とする社会に変わる。そうなれば、軍事力をたのむ紛争は、なくなっていく。

 

 

 

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