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それから、半年たったころ、地域に新しい特養ホームが建設されることになった。Kさんは、夫がその施設に入れるよう強く行政に訴えた。

4月の介護保険導入後、建設中だったその施設が6月に開設され、彼女の夫はその新しい施設に入居できるようになった。同時に職員の特別な配慮によって、Kさんも夫のいる施設に移ることができた。新しい施設でKさんに用意された部屋は個室だった。夫と気兼ねなく会えるようにという職員の気遣いである。

私が新しいホームにKさんを訪ねたのは、3か月たったころだった。訪ねる日を職員に連絡していたので、Kさんは、朝から楽しみに待っていたという。話は、メガホンを通してだったが、Kさんはずっとにこやかだった。30分たって、長くいると疲れるだろうと思い、帰ろうとすると、「さっき来たばかりなのにもう帰るの?」と言う。結局、一時間もいた。

Kさんは、「夫は、ほとんど私もわからなくなってしまったけれど、夫が元気にごはんを食べているのを見ているだけでも安心だ」と言った。

措置制度では、他施設へ替わることは不可能に近いことだった。介護保険制度になって、なおむずかしいことではあるが「選択」と「契約」という考え方が夫婦が共に施設に暮らすことを容易にした。

 

 

 

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