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老いの住まい NO.9

本間郁子

 

夫婦2人で特養ホーム

 

Kさん(女性、78歳)は、8年前に私がボランティアに行っている特養ホームに入居してきた。パーキンソン病を患い、1年前までは言葉もはっきりし会話も弾んでいたが、病気が進行し、今は言葉がほとんど聞き取れず、笑い声も弱々しくなってきている。その彼女をずっと見守り、週に3回は見舞いに来ていた夫が、突然言動がおかしくなった。電気がまをガスにかけたり、何日もひげを剃らず、伸び放題のまま外を歩き回ったりした。身だしなみはきちんとしていた人だったので、マンションの住人から、「おかしい」という連絡が保健所の方に入ったりするようになった。保健婦が様子を見に行き、ヘルパーを派遣したりしたが、泥棒だといって追い出され、どの人も長続きしなかった。

夫の変わり方にKさんが心配ばかりしているので、施設の職員が、在宅介護支援センターの職員とKさんが話し合う場をつくった。その結果、老人保健施設に入れた方が良いということになった。ところが、本人は、「私は、どこも悪くない。病院に入る必要はない」と強く拒否をした。しかしながら、1人でマンションに置いておく状態ではないし、そうかといって無理やり連れて行くのは良くないだろうとみんなが困っていた。いろいろな方法で説得しているうちに、ようやく「検査入院」ということで納得してくれた。

 

 

 

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