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この「(特にシニア)男性の社会参加」をどうやって推し進めたらいいのか、知恵を絞った揚げ句、意外な結論に達したのです。そのシニア男性が何と、各自の足元に居るではないか!

奇妙なことですが、主婦たちは夫を、自身がかかわるべき対象者とはどうしても考えられないのです。地域では大活躍の女性も、夫のこととなると「あの人はダメ」などと言ってあきらめてしまいがちです。

しかし夫にとって妻は、社会とつながるためには最高の仲介者であることに違いはないのです。というわけで、アドバイザーたちは一か月ほど、夫育てを実践してみようということになりました。具体的には「夫をホメてみよう」。

夫が今まで朝食しか作ってくれないとグチっていたのを、見方を変えて、「今日のは特においしいねとホメまくってたら、今は後片付けもしてくれるようになりました」と一人が報告していました。夫が家事をするのは当たり前とせず、「『助かるわ』と言えるようになってから、夫婦げんかも減りました」と言う人も。「あなたは気付いていないかもしれないけど、こうして私の活動仲間を送迎してくれるのも立派なボランティアなのよと言うと、最近は『今日は誰を送るの?』と声をかけてくれるようになりました」とも。

「こういうことは男のあなたでなければできないことね」と、持ち上げるのも効果があるようです。「皆さん、喜んでたわよ」と仲間からの評価を伝えるのも同じように夫に自信を与えているようだとの報告も。

改めて夫にこんなホメ言葉を連発しなければならないというのは、何かこそばゆいというか、それ以上に不自然な感じを抱きがちですが、考えてみれば、もし他人がこれをやってくれたら当然、それなりのお礼の言葉を発するはずです。それが、相手が夫となると、途端に「当たり前!」となってしまうのも、これまた不自然な感じがしないでもありません。

「夫婦は他人の始まり」といいますが、これを「夫婦は隣人の始まり」と言い換えて、たまには他人行儀な態度に出てみるのもいいことかもしれません。このホメ倒し戦術をやっているうちに「私を黙って送り出してくれる夫もボランティアをしているのだと気が付いた」人も少なくありません。帰宅した私の話を笑顔で聞いてくれているのも同じ、と。

 

 

 

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