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厚生省の見解は以下のとおり。

「『保険料をまったく徴収しないのは、みんなで負担して支え合うという制度の趣旨に反する』として、低所得者の保険料を一律に減免したり、そのために一般財源を使ったりしないよう、市町村に文書で通知している。だが、『介護保険は市町村に任された自治事務だ』として減免に踏み切る市町村が多い」(一〇月一日付読売新聞)。

 

介護保険料減免の対象者

1] 震災、風水害などにより、住宅、家財などに著しい損害を受けたとき

2] 死亡、障害、長期入院などにより、収入が著しく減少したとき

3] 収入が、事業の廃止、損失、失業などにより著しく減少したとき

4] 収入が、干ばつ、冷害、凍霜害などによる不作、不漁などにより著しく減少したとき

(市町村の介護保険条例準則)

 

また、自治体の中には「『財政に余裕がなければ減免はむずかしい』などと、国による減免措置の一本化を求める声もある」(一〇月三日付日本経済新聞)という。

 

新たな“バラマキ福祉”に逆戻りも

 

減免する市町村で対象となる被保険者の数は、六五歳以上人口の一%程度。実施自治体の財政負担も、対象者の人数にもよるが小さな町村なら年間数万円から数一〇万円で済むかもしれない。しかし、弱者救済は住民受けし、首長の人気取り政策になるだけに全国に広がりかねない。その結果、全国三三〇〇市町村のうち一〇〇に満たない一握りの市町村の“バラマキ福祉”は、蟻の穴が堤防を崩すように介護保険を瓦解させる危険をはらんでいる。保険料を全額免除する市町村は、それによる穴を自治体の一般財源(税金)で埋める。

 

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大森彌千葉大学教授。

 

 

 

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