実施によって浮き彫りにされた課題
介護保険が実施されて半年後にクローズアップされた問題は、およそ次のように整理できるだろう。
1] 要介護認定のむずかしさ
2] 家事援助の範囲の明確化
3] ケアマネジャーの力量とその中立性の確保
4] 介護サービス利用の手控えとサービスの種類による需給ミスマッチ
5] 介護市場の予測を誤った民間企業の撤退と参入不足
6] 一部市町村による第一号被保険者(六五歳以上高齢者)保険料の減免
一部マスコミは、これらをセンセーショナルに報道している。しかし、それらはスキル(習熟度)の不足によって起きているのか、仕組みの初期故障か、あるいは制度の本質的欠陥かのどれに当たるのかについて冷静に見極めることが大切である。その中で、国が「創設の理念を損ない、制度の根幹にかかわる」として危惧しているのは保険料の減免である。なぜならば、それは自治体が「できる事」と「できない事」および「すべき事」と「すべきでない事」との線引さにかかわってくるからだ。また、それは介護保険について沈黙してきた六五歳未満の第二号被保険者を含めた市民に、地方分権と市民自治のかかわりについて判断を求める基本問題でもある。
波紋呼ぶ一部自治体の保険料減免の動き
読売新聞(一〇月一日付)によると、六五歳以上の低所得者からの介護保険料徴収を独自に減免する予定の市町村は、少なくとも全国で八○に上るという。このうち三一市町村は、保険料の全額を免除あるいは補てんするそうで「減免を行う市町村はさらに増えそうだ」(同紙)。朝日新聞は六七市町村、日本経済新聞の調査では実に二七三市区町村が条例などにより減免規定を設けている。