心と教育 学校の新しいかたち
人間関係を育てる「里孫制度」
東京都 東村山市立化成(かせい)小学校
(取材・文/有馬正史)
今、子供たちのコミュニケーション能力が低下しているという。学校では多くの人材が教育に参加してきているのに、なぜなのか? 限られた時間の中で、その人たちとしっかりした人間関係が育っていないのではないだろうか。そこで、1人の人を時間をかけて理解し、人間関係を育てていく教育を実践している小学校を取材した。
化成小学校が、特別養護老人ホーム「白十字ホーム」と交流を始めたのは、1988年、音楽クラブの児童たちの訪問が最初であった。その後、学校と施設の相互訪問による交流が続けられたが、「もっと顔の見える交流ができないか」という地域ボランティアからの提案がきっかけで、91年の新学期から5年1組の40名の児童たちとホームのお年寄りとの「里孫制度」ができて、お年寄り1人に対し、児童2人が交流をするようになった。それが、学年の全3クラスおよそ90人の児童全員に広がった。そして、あるお年寄りの死をきっかけに、お年寄り2人に男女2名ずつの児童4人で交流をする現在の形になった。取材に伺った前日もお年寄りが1人亡くなり、里孫の児童たちがお別れのあいさつに行ったとのこと。お年寄りは、「死」までも子供たちに教えてくれる。5年生の1年間の取り組みでは、やっと、児童たちとお年寄りとの間に心のきずなができたころに終了してしまうため、6年生までの2年間継続する。卒業する時に、次の5年生がその交流を引き継ぐ。