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中高年世代に評判の高い「ラジオ深夜便」(NHKラジオ第一。毎晩午後十一時二〇分から翌朝五時まで)だが、今回のアンケートでも多くの声が寄せられた。

一昨年、本誌特集でも取り上げた(98年5月号)「ラジオ深夜便」はそもそも一九八八年秋、昭和天皇のご容体報道がきっかけ。情報をいつでも流せるように深夜も静かな音楽を放送したことから検討が始まり、「ラジオいきいきラリー」を経て九〇年にラジオ深夜便としてスタートした。

放送開始当初はラジオの深夜放送は若者が聴くもの、深夜便の聞き手も若者中心なのではないかという考えが制作側にあったようだが、いざスタートしてみると寄せられる投書の八割は六〇歳以上。しかもその数は月平均一〇〇〇通にも上るという。朗読やインタビュー、ニュース、音楽などでゆったりとした構成が特徴だ。その人気は聴取者とスタッフの交流の場「ラジオ深夜便の集い」にまで発展し、九四年以来昨年六月の旭川市の集いで五〇回を数えている。さらには放送をもう一度活字にした雑誌『ラジオ深夜便』も発行し、季刊から隔月発刊へと好評を呼んでいる。

「寝付けなかったり、夜中に目を覚ましてしまったというケースが多いようですね。中には毎日、絵手紙でお便りをくださる方もいる。この番組が聴取者同士の出会いのきっかけとなることもあるようです」と同深夜便でアンカー(アナウンサー)を務める一人、立子山博恒さん(右写真)は語る。

 

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熟年世代の心を温める深夜のラジオ番組。人気が集中するのは同番組の制作努力によるものだが、一方で他に選べる番組が少な過ぎるのではないかという素直な疑問もわく。この番組への変わらぬ高い人気が、もしマスメディアの若年世代重視の変わらぬ制作姿勢の裏返しだとしたら、何とも皮肉なことではないだろうか。

教養、娯楽、ニュース報道など、テレビやラジオにも硬軟さまざまな番組がある。先ほど触れたように今後は有料デジタル放送の普及や、さらにはテレビでも双方向性を目指すような時代ともなってくる。

自己選択・自己責任は、福祉分野の新しいうねりと本誌でも毎号のように紹介しているが、二一世紀はマスメディアにおいても同様のことが求められる社会となった。何を選ぶか、何を求めるか、その声をいかに作り手に伝えるか。中高年世代よ、声を出そう!

 

 

 

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