じっと潜んで死ぬのを待っているという感じですよ」とも言った。
このホームの職員体制は、入居者2.5人に対し職員1人。居室が2つのフロアに分かれている。Nさんのいるフロアには入居者が32人いて、私がいた昼間の時間は職員3人(うちパート1人)だけだった。職員の詰め所ではコールが鳴りっ放し。おむつ介助の人が20人。1人は、徘徊の激しい男性がいて、これまで4回も外に出て行ってしまい目が離せない状態だ。別のフロアにはもっと重度の人が多く、静養室にはターミナル・ケアの人がいる。お年寄りの目の前を足早に通り過ぎる職員に、「2時過ぎているのに、書道の先生まだ来ないのよ。今日休みなの?」と聞いたが半分も言い終わらないうちに、居室に入ってしまい見えなくなった。しばらくして、別の職員が、みんなのいる方向に向かって歩いてきたので、Nさんが手を振って、さっきと同じ質問をした。職員が、「書道は、第4月曜日だから来週よ」と笑顔で答えて通り過ぎた。車イスの人が、「私、字は書けないけどみんながいなくなって寂しいからついていくの」と笑った。
介護保険では、孤独感や悲しみを癒す心のケアまで考えられていないため、それぞれ施設においてボランティアを導入するなど独自の取り組みが必要となる。