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増える介護費用をどうする

 

四月から介護保険が実施されました。保険料については、軽減措置がとられてきましたが、一〇月から保険料の一部負担も出てきました。ご自分の経験を通して、どう受け止めていますか?

 

それまではいわゆる措置制度で、所得の低い人はほとんどタダで福祉サービスが受けられました。デイケアセンターの利用料も今の半分、医療費だって安かった。以前に比べると、母の介護費用は一か月一万数千円余分にかかるようになりました。おむつ代は、身障者の認定を受けてからは、月五〇〇〇円の年金が出るようになったので、正直言って助かっています。

一〇月からは自己負担が増えて、苦しくなります。母の場合、月に三〇万円強の介護サービスを利用できますが、自己負担のことを考えると、とてもそこまでは使えない。これから親の介護プランを検討する熟年世代の人なら、老後の準備はできるでしょうが、現在介護サービスを受けている人や家族にとっては相当の重荷になります。

 

よりよい介護保険制度へ

 

介護保険は導入してから半年以上たちました。さまざまな課題を抱えながらも、何とか軌道に乗り始めたと思います。ご自分の体験から介護保険制度をどうみていますか?

 

制度の導入以前から、在宅ケアを続けてきたわけですが、せっかく介護の社会化をめざして発足した新制度ですから、より良いものというか、より健全なシステムに育てていくことが大事だと痛感しています。ただし、来年秋からは全額保険料を負担しなければならなくなるわけですから、貯えの乏しい人にとってはまことに厳しい。現在、所得や年金収入が少なく、自己負担金や保険料の支払いに困っている人たちに対しては、何らかの臨時的な救済措置を政府や地方自治体で考えてほしいと思います。

もちろん年を取ってから親の面倒をみている私たち介護者も、ただ行政の側にお願いするだけでなく、現場での知恵を生かして、この制度を支えていく気構えも必要です。たとえば現在の介護制度は、“物理的”なケアが中心になっていて、精神的なケアがなおざりにされているように思います。「心のケア」は私たちが取り組むべき課題で、家族だからできること。ぼくは介護の手始めは「聴くだけボランティア」から始まるのでは、と思っています。自分自身も実家の周りでこんなボランティア活動を始めています。

 

 

 

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