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遠い田舎に独りで住んでいる母親か突然動けなくなり、実家で介護してほしいとSOSを発してきたら、長男のあなたはどうしますか? 今回登場する河西さんは、千葉果船橋市の自宅から長野県諏訪市に住む母親の家に毎週通い、手厚い介護を続けている。

今年で九年目を迎えた。長年の苦労話を七〇歳に近づいた河西さんは、ユーモアを交えながら、笑顔で淡々と話してくれた。男性だけの話ではありません。核家族化の進んだ今日、遠距離介護は他人事ではなく、私たちが避けて通れない課題になりつつある。

(聞き手 鎌田穣)

 

自分で作った介護スケジュール

 

千葉から信州・諏訪へ毎週、帰省してお母さんの介護を続けておられるそうですが、大変なご苦労ですね。なかなかできないことです。

 

母(やすさん)は明治三九年生まれの九四歳。この年ですから“まだらボケ”も入って、介護保険の認定では要介護度四、障害二級という状況です。歩くのは困難で、はう程度、もちろん食事、着替え、排泄には人手を借りなければ不自由します。本来なら特養に入る資格はあるのですが、「家で生まれ、家で死ぬのが自然よ」と頑として家を離れようとしない。

 

具体的にはどんな介護スケジュールを立てているのでしょうか?

 

私が遠距離介護を始めてから九年目を迎えますが、介護保険制度ができる前から家族介護やさまざまな福祉サービスを組み合わせて支えてきました。長年かけて作成した介護日誌をもとにケアマネジャーに介護スケジュールを作ってもらったのですが、ほぼ私の考えたスケジュールで進んでいますから、安心ですね。利用しているサービスは、デイサービス週二回、訪問介護七回、訪問看護一回、近くの開業医の先生は隔週一回の訪問診療、食事の宅配週二回、それに有償ボランティアの在宅サービス週一回など。一週間単位で午前、午後、夜間のスケジュールを組み、きちんと実行しています。最近はショートステイの利用もふえています。ご近所の人やボランティアにも助けられながら、在宅介護を貫いているのです。

 

交通費の出費は痛い…

 

そこで、長男の河西さんの出番というわけですか。

 

私は毎週、火曜日の昼ごろ帰省し、金曜日の午後まで母のめんどうをみて、四方山話に花を咲かせるのが日課。

 

 

 

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