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こんな意見もある。「呆け老人をかかえる家族の会」兵庫県支部に所属する会員の一人は「評価基準を与えたのだから後は当事者の自己責任でやってくれと放り出されるのだろうか」と不安を隠さない。要介護の判定、供給、サービスの中身から苦情処理まで行政が一切の責任を負う措置をやめるべきだという理屈はわかるが、措置にどっぷり漬かってきた日本人にとって「移行期間が短すぎる」と言うのである。

 

措置に安住した世間から自己責任を負う社会へ

 

今年の四月一日、介護を必要とする高齢者たちは一夜明けた途端に、「お上にお任せ社会」からいきなり「自己責任社会」に放り出された。神戸市内でNPOの支援・立ち上げをするNPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(CS神戸)の中村順子理事長は次のように述懐する。「私たちは自己責任を問う社会の厳しさに慣れていない」。厳しさに向かっていくことを支えようとするのか、それとも厳しさを回避する方向に向かっていくのか、「この辺を市がどう考えているのかわからない」と。

こうした問いかけに対して介護保険サービス研究会側は「新制度はやってみながら柔軟に修正していったらいい」(本沢座長)と語る。

問題はもっと深いところにある。CS神戸の中村理事長は「行政はすべての市民を守らねばならぬという思い込みを自戒し、自己責任を問えるような市民ルールをどうつくっていくのか」と問いかける。

自立した市民として第三者評価を利用するということは、それとセットになった自己責任という課題を抱えるということに、われわれは気づく必要がある。

 

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阪神・淡路大震災は高齢社会の問題をえぐり出す大災害でもあった。

 

 

 

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