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その際、利用者にとって不足しているのは、自分の好みに合ったサービスを提供してくれる事業者を選ぶための情報である。「第三者機関による介護サービス評価」情報は、自己責任による介護契約を結ぶために欠かせない判断材料になる。事業者自身にとっても、良い評価はセールスポイントになるためサービスの品質向上競争を促し、地域における介護サービスの全体の水準を底上げする効果を期待できる。

 

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震災に備えて災害訓練をする神戸市の消防局(市役所の玄関で)。

 

消費者行政と福祉行政の垣根を取り払って

 

これは「民・民契約である介護保険のサービス契約にどうすれば介入できるか」(森田文明神戸市介護保険課長)と考えて編み出された。介護保険を「消費者行政としてとらえた結果」(森田課長)という。第三者機関を消費者協会にやってもらうことにしたのもそのためだ。この方式を提言した神戸市介護保険サービス研究会には、市の消費者行政担当者も委員として参加するなど「縦割りになっている消費者行政と福祉行政の垣根を外し、情報を共有する」(本沢座長)ところも神戸方式の特徴である。

問題は理想通りの形で第三者機関が正確な調査を実施して的確な評価を下し、市が一般市民の利用しやすい形で評価情報を提供できるかどうか―である。

まず調査員の力量が問われる。「介護」は生身の人間を相手にする専門サービスで評価は一筋縄ではいかないはずだが、調査員の研修は一日だけである。実際に調査を受けたある事業所の管理職は調査員の資質に「疑問を感じた」と漏らす。二番目は調査結果をまとめて表現する評価ランキングの出し方が複雑でわかりにくいこと。「評価情報の評価」は評価基準のわかりやすさによって決まるはずだが、評価基準試案について市から意見を求められた福祉市民団体の関係者の一人は「複雑で答えようがなかった」と語る。

三番目は評価結果をどんな形で一般市民に提供するのかということ。市は二二項目の評価結果の原データを公開しない方針。介護保険サービス研究会のある委員は「電気製品の性能表示のような形がいい」と言っているのだが、いま一つイメージが描きにくい。

 

 

 

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