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ふれあいボランティア考

 

やわらかい頭

 

そのニュースを聞いた時、「ああ、アメリカ」らしいと思った。最初は「彼女」がUPI通信社を辞めると知ったとき。彼女とは、長年同社でホワイトハウスの名物記者として名を馳せてきたヘレン・卜ーマスさん。報じられたところによると、宗教系のメディア会社による買収に抗議した退職らしいとのこと。長年在籍しそれなりに保証されていたであろう地位と給与を、自分が持つ報道のあり方への信念を貫いて退職した潔さ。いかにもアメリカらしい。年齢はなんと79歳という。しかもすぐに別会社の契約コラムニストとなった。さらに職に就こうという自立の意思、そしてそれが可能となる社会基盤。いかにも「アメリカ的」だ。

さらに後日談。米大統領報道官は米国有力メディアの指定席であったホワイトハウス記者室の最前列席からUPIをはずし、極めて異例ながら、今後はトーマスさん個人の専用席にすると発表した。まさに「アメリカ」である。

日本の政府ではこんな対応は絶対無理だろうと思いつつ、万一やろうとしても、恐らく報道各社がそんな特別扱いを許さず、また国民の中にも批判の声を上げる人が少なくないと、そんな気がした。

アメリカにはアメリカの病める課題が数多くある。その社会をそのまま習う必要はないし、日本が持つ良さもさまざまにある。しかしアメリカでのボランティアの活発さを考えると、老若男女の区別なく個の意思が大切にされ、前例のないことにも果敢に対応し、それを素直に認め合う、こんな柔軟さが大きな要因なのだろうと改めて思う。

日本の高齢化はまさに前例なし。超高齢社会を支えるためにはボランティアやNPOなどの新要素が不可欠だ。そのためにも、まずは、みんなでもっと頭を「やわらかく」する必要がありそうだ。柔らかさとはやさしさの裏返しだと思うから。

 

 

 

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