「奥さんは?」
「女房は7年前に先に逝っちゃった。今は次男の嫁と孫3人と、一緒に住んでいます。嫁も床屋の資格があるんで、今も嫁に店を預けて2人でやってきたというわけです」
「それで、どんな遺言を?」
「長男は親を捨てて出ていった人間だから正直一銭もやりたくないんだが、先生の本の中に遺留分というのが書いてあって、次男に計算させたら長男の遺留分は1000万円くらいだというんです。それで長男には現金で1000万円、あとは土地・住まい・店舖などを含めて全部次男に残してやるという遺言を書いてもらいたいんです」
「お見事。100点満点です。早速そのとおりの遺言公正証書を作成しましょう」
講演を頼まれる機会も多いのですが、その時決まって出てくる質問が「親に何と言って遺言を書いてもらったらいいものか」という質問で、いつも悩まされます。
お年寄りに優しく、そしてお年寄りも優しく、それがお互いに大切なことのように思われます。