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意識ははっきりしていたが、体を動かすと痛がった。急変と事故が同時に起きてしまい2人の若い夜勤者はすっかり落ち込んでしまった。

この事故に対して家族は、明らかに施設のミスで起きた事故なので、保険外の治療費は施設で負担することと、入院が長期になっても施設に戻れるようにしてほしいということを要求した。施設側は、その2つの要求を受け入れた。

彼女は、この事故を踏まえ、緊急時に対するマニュアルの見直しを行って、全職員に徹底するよう指導しているが、教育指導だけでは解決できない限界も感じるという。手のかかる人が3人くらいいると、2人ではもう対応できなくなるのは火を見るより明らかだという。

疲れ切った彼女からその話を聞いているうちに、私のほうが不安になった。おそらく、徘徊するような手のかかる人は、入居を断るケースが出てくるだろうということである。

事故が起きるということは、お金の補償だけでなく、二度とくり返さないための介護者の技術向上と施設長の責任が問われることである。

特養ホームの大きな事故の発生率が夜間に多いというのは、事故の速やかな対応ができないことに原因がある。夜間の医療体制を早急に強化する必要がある。

 

 

 

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