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老いの住まい No.7

本間郁子

 

職員と介護保険

特養ホームの事故の補償

 

久しぶりに特養ホームの職員である友人と電話で話をした。施設で入居者の事故が起き、5日間ほど深夜まで仕事が続いたという。

話によると、職員の数が最も少ない夜勤帯に入居者が転倒、骨折して入院となった。家族への説明と事故の検証のために夜勤までして職員の指導を行ったという。

1フロアに50人の入居者に対して夜勤者は2人、重要事項説明書には拘束しないと明記しているのでそれを守るべく業務マニュアルを作り、離床センサーやベッドセンサーも取り入れて、細心の注意を払っているつもりだった。入居者の中にベッドから転落する危険性のある人が8人いる。その中でもとりわけ気を付けている女性の入居者が1人いる。その人は、1か月前に入居してきたが、夜になると不穏になり眠らなくなる。職員の目が行き届くように車イスに座らせて、詰め所にいてもらったり、おむつ交換やコールの鳴った時には、車イスを押して一緒に連れ歩いていた。

それが5日前の深夜に、1人の職員が居室の見回りに出て行った後、間もなく、緊急のコールが鳴った。「すぐ、来て!!」とその職員は叫んだ。慌てたもう1人の職員は、車イスのその人を置いたまま走り出した。入居者が痰を詰まらせて呼吸が止まったみたいだという。1人が蘇生をしている間、もう1人が救急車を呼んだ。そして、すぐに主任や看護婦に連絡しようと詰め所に走って戻ってみると、車イスに座っていたはずの人が転倒していたのだ。

 

 

 

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